
(19日・毎日新聞)【 インターネットのサイトに絡み08年中に犯罪の被害者となった児童(18歳未満)が1516人に上ることが警察庁の調べで分かった。いわゆる「出会い系サイト」による被害者は724人と前年比376人減。一方、日記やプロフィルを書き込んで誰とでも交流できるコミュニティーサイトなどの「非出会い系サイト」に関係した被害者は792人で、出会い系サイトを上回った。警察庁は「非出会い系サイトに関しても深刻な状況にあることが裏付けられた」と分析している。】
昨年,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が制定され,その施行は平成20年6月18日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日からと予定されています。これを受けて,モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)を始め,一見青少年の犯罪被害を助長しやすいように思われるSNSなどのコンテンツ提供事業について,青少年の健全育成の観点からの十分な対応を実施しているかを審査し,社会的なニーズと青少年の保護育成の観点を調和する努力を行う団体も本格的に運用を行っているところです。
本件記事によれば,コミュニティサイトなどの非出会い系サイトを通した児童の犯罪被害が深刻な状況にあることが報じられており,コミュニティサイト側も監視を強めるとのコメントが報じられています。結果的にとはいえ,こうした被害が抑止されないのであれば,そのような被害の温床になる事業について,コミュニティサイト運用管理体制が整っているとの認定をすることについての疑問も生じかねないことでしょう。この点,上記法律制定の際には,附則第3条で「政府は,この法律の施行後三年以内に,この法律の施行の状況について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされているため,民間自主努力で結果が出ないとなれば,当初の法案段階で予定されていたような,より厳しい官による規制を正当化することにもなりかねない訳です。
そのような事態を避けるためには,上記のコンテンツ監視事業者においても,より厳しい運用が求められるというべきです。それが形式的な認定制度になってしまうようでは,安全らしさの隠れ蓑にしかならないのですから。その意味で,実際に重大あるいは多くの被害を生じるコンテンツ提供事業者への厳しい対応を実施することができるかは,民間自主努力のあり方についての重要な試金石と思われます。
弁護士 田島正広
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