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弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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ネット上の名誉毀損新判断に観るネット観

以前,このブログで,ラーメンチェーン店運営会社に対するネット上の名誉毀損事件に関する無罪判決(東京地判平成20年2月29日)を紹介しましたが,先日情報関連をご専門にされる,ある学者の先生とお話しした際に,この事件との関わりを思い当たることがあったので,ご紹介しておこうと思います。

その先生によれば,ネット上の情報の受け止め方は世代毎にかなり特徴があるとのこと。30~40代以上の世代にとっては,主たる情報源は新聞や書籍であり,ネットは補助的に活用するツールに過ぎないのが一般的ですが,若い世代においては,この位置づけは総体的に逆転するとのことです。特に20代前半の学生や社会人ともなると,収入的に厳しい状況にあることもあって,テレビを持たず新聞も買わず,ニュースはネットで確認する方が多いそうです。ネットこそが主たる情報源となっているわけです(もちろん,あくまで一般的傾向の話です)。そういえばネットに精通した20代の知人が,ニュースを2ちゃんねるの新着情報で観ると言っていましたが,これもその一例でしょうか。また,ネット関連ビジネスを展開するある学生がレポートを見てほしいと持ってきたときに,出典に文責不在のウィキペディアが挙げられていて驚いたのですが,これもネット上の情報それ自体への信頼の高さがベースになっているが故のことかも知れません。

上の世代の方にとっては,ネット上の情報はうさん臭いのが前提で,トイレの落書き程度の位置付けでしかないため,先の裁判例に判示されたように,ネット上の情報が信用性に欠けることをもって,ネットに投稿した記事の名誉毀損性を重くは評価しないことになりやすいのではないかと推測します。上記裁判例は,ネット上では,(被害者側に誘発的な言動があった場合においてではあるものの)通常の場面で要求されるような十分な調査を尽くさずとも,ネットの個人利用者として要求される程度の調査を行えば名誉毀損とはならないと判示していますが,信用性に欠けるという基本認識に立てば,ある意味当然の帰結かもしれません。

しかしながら,若い世代の多くの方にとっては,ネットが重要な情報源であり,その信頼性の吟味の前にまずその情報を無批判で受け止める可能性がないとはいえないように思えます。そうなると,上記裁判例のように,「ネット上の情報だから」という理由で調査義務を緩和するような発想に立つことは,限りなく名誉権の保護を後退させることになりかねないように思えます。

この問題は,ネットリテラシー自体の問題として捉えなければならないことは当然なのですが,世代毎に観てもネット上の情報の捉え方に特徴が観て取れるような状況であるというのであれば,裁判においてもそれを前提とした判断がなされなければならないというべきでしょう。裁判官の感覚が必ずしも国民一般と同じではないことを理解していただきたいところです。アンバランスなネット観によって社会が混乱することのないように期待しています。

弁護士 田島正広

○関連リンク
田島総合法律事務所
フェアリンクスコンサルティング株式会社
パンダ君のコンプラ




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