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弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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荏原製作所、社外監査役大森義夫氏が事業報告を不承認

荏原製作所、監査役1人が08年3月期事業報告を承認せず

<荏原製作所は6日、2008年3月期決算の監査報告書で監査役の1人が「コンプライアンス上、重大な疑義があるので、事業報告を承認しない」とする意見を付記したことを受け、27日開催の定時株主総会で計算書類を決議事項として上程すると発表した。>(6日時事通信)



荏原製作所については、昨年会社資金の不正支出事件が報じられ、会社側もその事実を早くから公表しています(詳しくは、「会社資金の不正支出に関するお知らせ」をご覧下さい)。

今回は、社外監査役の大森義夫氏が同事件の調査が不十分で、経理帳簿に虚偽の疑いがあるとして決算を承認しなかったとのことです。同社では会計監査人の監査法人が適正意見を出していたこともあり、大森氏の不承認がなければ定時株主総会では決算報告議案となるべきところ、決算承認を株主に問う異例の事態となりました(同社の第143期定時株主総会の決議事項に関するお知らせはこちらです)。

7日付けの日経新聞では、大森義夫氏のコメントとして、情報開示やヒアリングの要請に関係者の協力が得られなかったことが報じられ、これに対して会社側からは協力しなかったことはないとの社長コメントが紹介されています。

大森義夫氏は、警視庁公安部長、警察大学校校長、内閣情報調査室長、外務省「対外情報機能強化に関する懇談会」座長などを歴任され、日本政府のインテリジェンスや危機管理のあり方についても、積極的に発言されている方です。今回の事件の真偽は定かではありませんが、大森氏が同社に招聘されたのは、企業のコンプライアンス経営実現のために同氏の経験やインテリジェンスのノウハウが必要との認識に立ってのことでしょう。インテリジェンスの観点からは、情報の取り扱い方は非常に重要な意味を持ちますが、およそ上場企業である限り、株価に影響を及ぼすような重要情報は速やかに適時開示すべきものです。また、危機管理の観点に立っても、いったん生じた不祥事についての調査は、企業への信頼を回復するための手段として、徹底的に行われなければならないものです。そのためには企業トップのコンプライアンス実現に向けた決意が非常に重要なキーワードとなります。これを欠いたがために、市場の信頼を失った企業は挙げればキリがありません。

専門家の名前だけ拝借してコンプライアンスらしさの隠れ蓑にしてしまうようなことはコンプライアンスの観点からあってはならないことであり、その意味で今回の会社側の調査がどこまで真実を明らかにする意図をもって行われたものなのか、その内容の適正も含めて、来る27日に予定される株主総会での議論が注目されるところといえます。

弁護士 田島正広

○関連リンク
田島総合法律事務所
フェアリンクスコンサルティング株式会社
パンダ君のコンプラ




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コメント


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相互信頼の構築に向けて

相互リンク貼らせて頂いている小針です。たいへん興味深く拝読させていただきました。
 私のクライアントはほとんどが中小企業ですが、どこの現場でもコンプライアンスの実現化が急務になっていると実感しています。結局これ無しでは対外的な信頼だけでなく、経営者と社員と言う社内の相互信頼も徐々に失われれていく現場を見ているからです。
 その意味で、社外監査役とはいえ大森氏が投げた一石はたいへん価値のあるものだと思います。きっと荏原製作所内でも心のうちで拍手をした方は少なくないのではないでしょうか。
 個人的には、たとえ社外の信頼が一時失われても、社内の相互信頼と結束があればその会社は立ち直れると思っています。

こばり | URL | 2008年06月09日(Mon)16:18 [EDIT]


コメントありがとうございます

小針さん,相互リンク&コメントを頂き,どうもありがとうございました。荏原製作所でどのような経緯があったかは不明ですが,監査役の大森義夫氏が,あえてただ一人異議を唱える状況は,それ相応の覚悟なくしてはあり得ないことです。それは結果的に同社のコンプライアンスへの信頼を回復する上で,重要な意義を有することでしょう。コンプライアンスを失った企業の内部で,社内の相互信頼が失われる状況はよく分かります。社員が一丸となって仕事に専念できる環境こそが,株式価値の最大化につながるものですね。コンプライアンスの仕事をする者として,そのような状況を実感できることは嬉しいものです。

田島正広 | URL | 2008年06月09日(Mon)19:07 [EDIT]


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