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弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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内部通報制度(2)~内部通報制度の位置付け

2 内部通報制度の位置付け

 低成長時代の株主保護・投資誘因の必要性がもたらすグローバルスタンダードでの企業統治の要請,そして企業の社会的責任の意識の浸透と消費者の権利意識の高まり等の諸要因は,コンプライアンスを強く要請しています。法令違反行為が外部告発によって発覚する場合,強い社会的批判にさらされ,企業への不買運動にも発展するところとなっており,自社内部における法令違反行為の早期発見と自浄作用を機能させることが重要となっています。この観点から注目されるのが内部通報制度です。各企業における名称は,企業倫理ホットライン,企業倫理ヘルプライン等様々ですが,その趣旨としては,法令違反行為への内部的対処のために,内部での通報手段を準備し,内部調査に基づき法令違反行為の是正を図るものです。

 この点,内部通報の保護に関連する法令としては,平成18年4月施行された公益通報者保護法があります。同法は,公益通報を行った労働者に対する解雇,不利益取扱い等を禁止し,その効力を無効ならしめることで,公益通報者を保護し,社会経済の健全な発展を企図するものです。従って,この法律は,むしろ労働者の保護にウェイトを置き,通報の最低限の保護ラインを表しているものといえます。これに対し,内部通報制度は,通報をもってコンプライアンス維持,確立のための手段と捉え,これを積極的に運用するものといえるでしょう。企業がコンプライアンスに本気で取り組むためには,公益通報者保護法の定める最低基準を維持するばかりでは消極的というほかなく,むしろ積極的に内部通報制度の運用・改善に取り組むことが重要といえる訳です。

 近時,いわゆるJ-SOX(金融商品取引法)による財務分野での内部統制評価監査制度や,会社法上の内部統制システムの導入が行われているところですが,これらとの関連でも内部通報制度は重要な意義を有します。まず,金融商品取引法が念頭に置く内部統制とは,(1)企業経営の目的達成に向け,(2)そのための合理的な保証を得るために,(3)社内に構築する体制・プロセスをいい,その目的については,次の4点が挙げられています。すなわち,(a)業務の有効性及び効率性,(b)財務報告の信頼性,(c)事業活動に関わる法令等の遵守,(d)資産の保全の4つが挙げられます(「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」)。(c)は,事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進することを求めており,そのものズバリ,コンプライアンス体制の確立を求めるものです。この点は,会社法上も362条4項6号,施行規則100条において,使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(同条1項4号),当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制(同条1項5号)の整備が求められ,コンプライアンスの確立が不可欠となります。 
 
 ところで,特に財務に関する内部統制環境においては業務執行部門におけるコントロールとモニタリングの視点に力点が置かれるところですが(「リスク新時代の内部統制~リスクマネジメントと一体となって機能する内部統制の指針」等),業務執行のラインにおけるモニタリングは,不正を暴くべき担当部署との連携が不十分であったり,経理担当者による不正が介在する場合には,十分な機能を果たせない場合がありうるところです。こうした場面では,搦め手からのモニタリング手段としての内部通報制度が重要な意義を果たすことになります。こうして見てくると,内部統制とコンプライアンス,そして内部通報制度という,一見すると直接の関連のないように見える諸制度が,実は緊密に絡み合って企業のゴーイング・コンサーンのために重要な意義を有していることがご理解頂けることと思います。


弁護士 田島正広  http://www.tajima-law.jp/

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