弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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安全保障関連法案の策定で忘れ去られる立憲主義の重要性

政府与党間の協議にて,集団的自衛権行使や国際平和維持活動等の場面における国会承認のあり方について,一応の方向性が見出されつつあります。法治国家としては一応の評価となるのかもしれませんが,大変残念ながら法の支配という観点からは評価に値しない結果としかいいようがありません。多数決をもっても容易には超えることのできないハードルを国会に対しても設けることで,一時の扇情的な民意を背景とした国家権力の暴走を止め,国民の冷静な議論を喚起して人権保障の基盤を保持し,国家の発展を図ることが立憲主義の本旨というべきものです。

この点は,我が国の過去の歴史を振り返るとき,決して忘れ去ってはならないことになるだろうと思います。このブログでも採り上げてきましたが,我が国は,昭和初期の頃,関東大震災による経済の疲弊や世界恐慌後のブロック経済化の流れの中で,植民地を持たざる後発帝国主義国家として,中国進出を志向することになります。国民においてそれはいつか圧倒的民意となり,軍部もそれを背景に満州事変を遂行した訳です。その後はといえば,政治的に引かれた軍事行動の限界線は,その都度軍部の専断的な行動によって反故とされ,既成事実を作り上げればそれを大政翼賛的で批判勢力のない政治が追認するという時代になってしまいました。この時代に顕著だったことは歯止めとなる国家機関,国家としてのルールが存在しなかったことです。

大日本帝國憲法は法の支配を定めたものではなく,むしろ主権者天皇による人の支配を定めたものです。ですが,それは藩閥支配の中で内閣ですら無視することのできない隠然たる勢力である元老を生み出し,その超越的な権力によって軍部を含む国家権力に対する歯止めが機能した時期がありました。しかし,最後の元老である西園寺公望公がその威勢を失う頃,軌を一にして満州事変は起こるに至ります。

人の支配は,国家の支配を人に依存するものです。人が権力を濫用すれば,もはや歯止めとして機能するものはありません。この反省に立つとき,法の支配として国家権力の歯止めとなるべき法が必要なのであり,それを実定法化したのが憲法なのです。一時の民意で国会の多数勢力を取ることはでき,その国会で法律制定・改正を図ることはできます。衆議院の優越が認められる我が国では,衆議院選挙の意味は大きいといえます。ですが,それでも超えられないハードルによる憲法改正を経なければ,法律制定だけでは権力行使が許されないとなれば,一時の民意による暴走への歯止めは可能となります。特に憲法改正において,国民に対する十分な説明と熟慮の期間を与えるとする現在の憲法改正国民投票法においては,国民においても冷静な判断が可能な仕組みを提供するものであることが期待されるのです。

しかし,今回の一連の安保法制論議においては,憲法上の問題は昨年示された集団的自衛権行使容認を含む憲法解釈の変更によって解決済みとの扱いとされ,国会主導で全て法律マターとして要件化が進行しました。例えば,平和維持活動で海外派兵するに当たって国会の事前承認を例外なく求めるかについて,与党間で例外を認めない旨の合意が成立し,これを前提とする法律案が策定されることになりました。

このような問題を法律マター化をすることで,憲法による歯止めは完全に空洞化することになります。事前承認が面倒であれば,後の法律で事前承認の例外を認めればよいだけのことです。法律制定・改正を,選挙が一段落した頃に行い,安全保障と立憲主義を争点とする国民投票ないし選挙は避けることで,国会は憲法を超越した国家権力を手にすることになります。それは暴走防止のための法の支配,それを憲法で実定法化する立憲主義を全くないがしろにしてしまうものというほかありません。悪しき前例が次の悪しき前例を作った戦前の数々の事変を彷彿しない訳にはいかないのです。立憲主義を無視した政府与党の政策形成に異議を申し述べる次第です。
                                       
弁護士 田島正広

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