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弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

集団的自衛権を憲法で規定すべきか

憲法改正論議が,96条先行改正論の事実上の棚上げで勢いを失いつつある中,むしろ集団的自衛権の解釈変更についての動きが注目されるようになってきました。内閣法制局の見解は,集団的自衛権は保有しているが行使できないとの解釈ですが,これを変更しようという動きです。

この点,私が危惧するのは,いったん集団的自衛権が行使可能とされた瞬間に,それが本来憲法が予定する立憲的コントロールの事実上及ばない領域として,事実上無制限に行使される事態が生じることです。すなわち,立憲主義の観点からすれば,およそ国家の軍事力については,事前・事後の厳格なコントロールに服する必要があり,集団的自衛権行使の名の下に侵略戦争を行うことなど、およそあってはなりません。しかし,集団的自衛権が国連憲章51条で国家の「固有の権利」として存在していることを理由に,それは憲法に定める必要のないものであると帰結するとなると,結局,固有の権利は政治家が自由に行使できる国家権力と位置付けられてしまい,憲法的拘束が及ばないものとなりかねないように思います。それを法律で規制するといっても,それは政権側が自由に改正できる以上,立憲的な拘束と呼ぶにはほど遠いものとなります。

なるほど,集団的自衛権は国家の固有の権利ですから,憲法にあえて規定しなくともそれは行使可能との帰結を導くことはできます。ですが,それが立憲主義にかなう結論でしょうか。そもそも我が国は憲法9条を持ち,軍隊を持たず交戦権も放棄している前提に立っている訳ですから,憲法上も交戦を前提とする要件論に関する縛りが存在しません。その中で解釈変更だけで集団的自衛権行使を容認する場合,立憲的コントロールの空白を生じかねないと懸念する次第です。

集団的自衛権と一言で言っても,それが想定される場面は諸々存在します。解釈変更によって,それが行使可能と解釈されるにしても,どのような場面においてどのような要件の下で行使を容認するかは国家権力に対するコントロールのあり方の問題というべきです。すなわち,立憲主義の観点から,フリーハンドで集団的自衛権行使を容認すべきではなく,具体的個別的場面を想定した憲法的拘束を実現することを前提に,その解釈変更が可能かどうかを検討すべきではないかと考えます。

憲法で国家権力を拘束すべきという立憲主義の観点に立てば,集団的自衛権に対する拘束は何より憲法において実現すべきと考える次第であり,憲法にその旨の条項を定めるべきと考えます。

                                                 
弁護士 田島正広

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