弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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消費税増税と還付問題

菅首相:消費増税 低所得者、全額還付も 年収水準に言及

【 菅直人首相は30日、山形市内での参院選街頭演説で、消費税率を引き上げた場合の低所得者対策について「年収300万円、400万円以下の人には、かかる税金分だけ全部還付する方式(もある)」との考えを示した。】

(6月30日毎日新聞)

 消費税増税の方向性を示す中で,菅首相が表した低所得者向け逆進性緩和策としての「消費税還付」の手法には,様々な批判が寄せられています。その対象世帯の所得額が揺れていることが,これに拍車をかけている印象があります。

 この点,私は,公平な課税である消費税を増税しつつ,直間比率の見直しや低所得者向け対策としての生鮮食料品等の日常品への課税・税率の見直しを行うことには賛成ですが,消費税の還付という発想には賛成できないところです。

 今,この国が置かれた財政の窮状を救える手段として早期の消費税増税以外にどのような手法があるのか私は分かりません。GDPの成長をもって赤字部分をまかなえるとの主張もありますし,無駄をなくせばなんとかなるとの主張もありますが,現実味を感じないのが昨今の現状です。その意味で消費税増税自体はやむを得ないところと思います。

 ところで,低所得者向けの逆進性緩和策をどうするかの点がその際の論点です。この点,現在は,よほどの零細商店を除けばPOSシステム等を用いた売り上げ管理体制が導入されており,生鮮食料品限定の消費税非課税or減税措置を取ることは容易です。本来,消費税導入段階で,なぜ生鮮食料品等の日常品に課税するのかの議論があった訳ですが,当時と今とでは,議論の背景となる商品流通管理の実情が異なる点には注目していいと思います。それに加えて,そういった管理対応が困難な零細商店は現在でも売り上げ1000万円以下なら消費税納税義務がないところですから,課税の複雑化の影響は直接及ぶところではないでしょう(もし必要があれば,いったんは縮小された納税義務を負わない範囲を再び一定範囲で拡大することは,別段難しいことではないはずです)。

 これに対して,消費税の還付を行う場合,そもそも何をもって還付を申請するのか不明で,低所得ながらあまり消費をせずに生活しつつ,給料のほとんど全てを消費した等と申告する方をどう扱うのでしょうか。結局,一律の還付になるのでしょうが,それ自体効率よく課税して小さな政府を志向するための仕組みである消費税制度をもって,還付制度に伴う面倒な事務処理付きの大きな政府に向かわせることにもなり,行政コストを上昇させる結果,なんのために消費税を増税するのかも不明という事態になりはしないでしょうか。既にある生活保護の仕組みと併存させることの意義もよく分かりません。それに,還付の対象に外国人も含まれるなら,還付目当ての入国も懸念されます。

 選挙期間中ということもあって,少しでも国民の期待に応えたい気持ちがあるのは分かりますし,船出したばかりの政権ですから,引き続き期待をしたいところでもあります。その意味でも制度設計は慎重にして頂きたいものです。


弁護士 田島正広

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