弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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普天間基地移設問題と日米の対等なパートナーシップの必要性

普天間移設はシュワブ陸上-ホワイトビーチの2段階で 政府方針判明

【 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で25日、政府の方針が判明した。当面は米軍キャンプ・シュワブ(同県名護市)陸上部に600メートル級のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)を建設し、最終的には米軍ホワイトビーチ(うるま市)沖合を埋め立てて代替基地を造るという「2段階移設案」で対米交渉に臨む。】

(25日産経新聞)

 普天間基地移転問題については,国益の観点からの米軍基地の必要性と近隣住民の安全・生活の平穏といった利害の衝突がありますが,いざ移転となると,国内候補地からは反発を受けることはあっても歓迎されることはないのが現状です。そのため,移転先候補に国外が挙がる訳で,有事の際にヘリコプターが展開できるかを後回しにした議論が展開されることにもなります。

 この問題を考える時,なぜ米軍基地がこれほど煙たがられるのかを先に考えた方がよいように思います。もちろん,基地の移転を受け入れることで産業基盤が形成されることへの期待感を持つ方もいることでしょうが,反面,基地があれば,土壌汚染の虞を否定することはできないでしょうし,事故でも起ころうものなら被爆の虞すら感じる人も多いことでしょう。核兵器の我が国への持ち込みについては,近時の調査で過去のうやむやな経緯が明らかにされつつありますが,近隣住民の安心・安全に力点を置いた外交の不在こそが,基地への拒絶感の根幹をなしているのではないでしょうか。

 また,米軍人の性犯罪をはじめとする重大犯罪に対しては,捜査段階の身柄確保に地位協定上の限界があります。米国側も引き渡し義務のない起訴前段階において任意に身柄引き渡しに応じる運用を取っているといっても,今後どこまでそのような対応が継続実施されるのかは法的には保証の限りではありません。このような状況の中で,子どもを持つ親に不安感を持つなというのは無理というものです。

 日米地位協定の不平等性はつとに指摘されるところですが,サンフランシスコ条約から60年近くを経た今日,真に対等なパートナーシップを確立することによってこそ,基地近隣住民の安心と信頼の土壌が醸成されるように思われます。これ抜きに基地移転先をどこにするかを議論しても,それは臭いものの押し付け合いでしかないように思います。国益の観点から基地の必要性について納得感があり,同時に地域住民の安心・安全にも配慮し,地域経済の発展にも貢献できる基地移設でなければ,誰もそれを受け入れたくはないことでしょう。

弁護士 田島正広

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日弁連会長選挙と司法制度改革の方向性

日弁連会長に宇都宮氏 再投票、改革訴え主流派破る(10日・朝日新聞)


千葉法相、司法制度改革「先祖返りすることがないよう」(12日・日経新聞)


日弁連会長選挙は10日再投票が行われ,宇都宮健児候補が山本剛嗣候補を破り,当選を果たしました。前回投票では投票総数で下回った宇都宮候補が,総数でも山本候補を逆転し,獲得単位会数もさらに増やしての当選でした。この選挙で特に地方からの風を感じるところは顕著にあったように思いますが,その要因をざっと挙げれば次のようなものでしょうか。

・法曹人口論では,年間3000人増員の閣議決定の背景となった法律家の社会での活躍への期待とそれが達成できていない現実とのギャップ感が強まっていること。

・裁判制度の改革という点では,裁判員制度への対応が進む一方で,そのあり方に疑問を呈する意見もなお根強く,また,地方の支部などでの裁判は裁判官不足で物理的に限界があること。

・業務という点では,法テラスや被疑者国選業務など業務数自体は確保できていても,苦労に見合う報酬を得ている認識は弱く,これらに依拠せざるを得ない若手には疲弊感が強いこと。

・法曹養成制度という点では,ロースクール教育が理念を十分に実現できていない認識が広がり,その改善の必要性が指摘される一方,その方向性への確信を持てない会員も少なくないこと。

・会務運営という点では,「主流派」(新聞用語ですが)と反主流派の色分けが顕著な時代が続いたことから,多数を占める主流派の組織力による支配への閉塞感が広がり,多様な価値観を反映すべき法の支配の担い手としての立ち位置に疑問を感じる会員も少なくなかったこと。

ざっと挙げると,こんなところでしょうか。もとより,一つずつ取ってみても,それぞれ反論の余地があるところですから,あくまで社会現象としてそいうした現象があったように思うとの私見を述べる程度の意味になりますが。

確かに,年間3000人増員されれば企業にも官庁にも弁護士が溢れ,社会の隅々まで弁護士の活躍によるコンプライアンス体制の構築と社会正義の実現が進むかに説明されてきましたが,現実的にはそのような状況にはなっていません。むしろ,社会経験のない新人弁護士を敬遠する企業もあるように思います。

また,司法予算の増額の必要性はつとに指摘されてきましたが,それが十分でないために,例えば,地方では支部に裁判官が常駐せず,事件処理も停滞して,本来もっと多くの弁護士を支えられるはずの基盤が機能していないところでもあろうかと思います。同時に,国選事件などは儲からない事件と位置づけられ,これらの業務に疲弊する若手も多くみられるところと思われます。

さらに,裁判員制度にしても,官僚司法の打破と司法の民主化の理念とは裏腹に,裁判のショー化を懸念する声は根強くあるように思います。

加えて,徒弟制度的なOJTによる実務的教育がこれまで機能してきた訳ですが,急激な法曹人口増の前に新人を吸収しきれなくなった結果,実務家としての適格性に問題がある弁護士が市民にリーガルサービスを提供する現実が生まれてしまいました。ロースクール教育が即戦力たりうる実務家養成機関として不十分であるにしても,それをフォローすることが非現実的になりつつある訳です(若手に対する業務研修の提案はありますが)。

その上,会務運営上,対決から融和へという宇都宮候補の論旨に期待した会員も多くいらっしゃったことでしょう。それが今後の政策決定の場において実現されうるものなのかは不透明ですが。

こうした要因を考えれば,この選挙結果はむしろ当然の結果のように思えます。責任ある政策形成と会務運営を標榜しそれを実践してきたことに対する自負心を,これまで執行部を運営してきた主流派は強く持っていたと思います。それ自体は素晴らしいことですが,それが独りよがりになってしまい,多数派による押しつけになってしまってはいなかったでしょうか。私自身も主流派に身を置いて選挙を戦った人間なので,主流派に対してあえて批判的にものを言いますが,少数派の不満は,弁護士自治を危殆化させる無知論・政策への無理解として片づけられてはいなかったでしょうか。二年に一度の選挙の度のリップサービス,あるいはガス抜きで済ませられる問題と思ってはいなかったでしょうか。2000年の臨時総会で承認された法曹人口年間3000人増員について,どこまで本気の検証作業がなされ,それを踏まえた社会へのアピールがなされていたでしょうか。会員の多くに時間をかけて醸成された不満感や不安感を,組織選挙による知り合いへの架電という選挙手法論で交わせるなどと安易に考えてはいなかったでしょうか。そもそもそのような選挙手法は,法の支配の担い手としての自覚に基づく選挙手法といえるのでしょうか。こう考えてくると,今回の選挙結果を踏まえ,従来の主流派は政策形成のあり方に対する抜本的な改革の必要性を強く認識すべきというべきではないかと思います。

ですが,その一方で,そこでいう会員の不満感や不安感について,私にはこの段階に至っても,残念に思えるところがあります。それは,わざわざ法曹人口を増やして儲からない業務を拡大するよりも,今までのままでいたいという「本音」が,今回の選挙でも露骨に見え隠れするところがあったのではないかという点です。例えば,中小企業相談業務は,都市部では当たり前のことですが,地方では裁判業務が中心であまり浸透していないようです(過去の別稿に譲ります)。これを推進するための相談ダイヤル設置も都市部ほど地方は熱心ではないように感じますし,実際に相談を受けようにも一人事務所で自分が支部に裁判に出ているとなると,事務所には弁護士がいないという事態も地方では多いでしょう。それを避けるためにわざわざコストをかけてイソ弁を雇うかと,これに懐疑的な会員も多いのではないかと推測します。

この問題は,本来弁護士がどう食べていくかの問題ではなく,市民の付託にどう答えるべきかの問題ですが,しかし現実の厳しさの前に理念だけでは対応できない多くの会員がいたということではないかと結論付けざるを得ないように思えてなりません。

法曹人口論については,これまでの日弁連執行部は,政府の示した方向性に真っ向から反対するのではなく,内部の反対意見にも配慮しながらも,業務拡大による基盤整備やローススクール教育の充実,弁護士登録後の研修制度の充実などによって,世論との対立を避けつつ舵取りをして来たと思いますが,それは過去に法曹人口の増員に消極的な姿勢を示して業界のエゴと批判された経緯を踏まえてのことと思います。

そうした経緯をみるにつけ,幕末の幕府の対応がだぶって見えるのは私だけでしょうか。すなわち,諸藩で沸騰する攘夷論など非現実的で責任ある政策決定上あり得ず,かえって国家主権の喪失を招きかねないことから幕府は独断的に開国を進めました。しかし,それに対する反発が強まる中で,指導力を失った幕府は,攘夷を諸藩に実際にやるだけやらせた結果,下関でも鹿児島でもあっという間に完敗して,それが全く通用しない論であることを証明して見せました。この頃は議論が開国か攘夷か,佐幕か倒幕かで錯綜していた訳ですが,実際に攘夷で失敗することで,開国それ自体は揺らぐことなく推進されたのです。もとより,ペリー来航への対応に揺れ,桜田門外の変を経て,指導力を失った幕府はその後政権を失いますが,たとえ不平等条約を押しつけられたにせよ,国家主権・独立の維持には成功したのです。

この点,開国=増員受け入れ,攘夷=増員反対と位置づければ,団体を挙げて攘夷を一度派手にやってみれば,かえって開国路線を取りやすかったのかもしれませんね。私は,それは既に2000年前後の時期に十分経験したことと思っていたのですが(もちろん,増員論の検証の必要性はありますが),歴史を知らない若手会員が増えた今,もう一度攘夷をやらなければならないのかも知れません。

司法試験合格者大幅減員論が,国や市民にどれだけ理解され支持されるかは重大な懸念事項ですが,今回の選挙結果からすれば,試しにやるだけやってほしいという会員が多かったということでしょう。それが全く相手にされないとしても,実際に血を流せば多くの会員に理解されるのかも知れません。しかし,そこで流される血が弁護士自治の喪失ともなれば,幕末の国家主権維持にも比肩する最大利益を失うことになりかねません。幕末に発揮された危機状況でのバランス感覚が,これから攘夷をする上でこの団体においても発揮されることを願うばかりです。

今後の日弁連運営について,法務大臣の前掲発言を初め,早くも雲行きは不透明感を増していますが,会員の声に耳を傾けつつも,責任ある政策形成と会務運営を継続して頂きたいと思う次第です。


弁護士 田島正広

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