
(27日・読売新聞)【 東証1部上場の精密機器メーカー「オリンパス」(本社・東京)の男性社員が、社内のコンプライアンス(法令順守)通報窓口に上司に関する告発をした結果、配置転換などの制裁を受けたとして、近く東京弁護士会に人権救済を申し立てる。
男性の名前は、通報窓口の責任者から上司に伝えられ、異動後の人事評価は最低水準に据え置かれている。公益通報者保護法では、社内の不正を告発した従業員らに対し会社側が不利益な扱いをすることを禁じているが、男性は「こんな目に遭うなら、誰も怖くて通報できない」と訴えている。】
企業におけるコンプライアンス確立のために,内部通報制度は有用な制度として注目されています。法令・企業倫理違反行為を企業が内部的に早期に把握し,調査と改善による自浄作用を発揮することで,コンプライアンス体制の強化を図る趣旨です。
しかし,せっかく内部通報制度を導入しても,通報者を不利益取り扱いしてしまうようでは,誰も怖くて通報などしないことでしょう。内部通報制度を生かすも殺すも,企業のコンプライアンス確立に向けた本気度次第なのです。「仏作って魂入れず」にならないようにして頂きたいものです。
今回の事件は,まだ会社側の対応状況が報じられていないため,一方当事者の主張のみをベースとした断定は避けますが,そもそも会社内部の通報窓口への通報は,いかに匿名性を守るといってみても,現実的にそれが難しい場合が多いように思われます。仮に,会社側として不利益取り扱いを一切行っていない場合であっても,通報を行った社員からは,通報を理由とした不利益取り扱いがなされたのでは,との疑念を持たれやすいといえます。今回のような報道に接すると,匿名性の完全に保障された社外の内部通報窓口の併設という視点がさらに重要度を増していくように思われます。
弁護士 田島正広
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