弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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ネット上の名誉毀損・逆転有罪判決

ラーメン店中傷書き込み、ネット名誉棄損に逆転有罪 東京高裁


インターネットのホームページ(HP)にラーメンチェーン店を中傷する文章を掲載したとして、名誉棄損罪に問われた会社員、橋爪研吾被告(37)の控訴審判決で、東京高裁(長岡哲次裁判長)は30日、ネットの特性を考慮して同被告を無罪とした一審・東京地裁判決を破棄、検察側の求刑通り罰金30万円の有罪判決を言い渡した。
 弁護側は判決を不服として上告する方針。

(31日・日経新聞)

 ネット上の名誉毀損の成立基準を緩和する「新基準」が昨年2月に東京地裁で示されたことは、以前にこのブログその他で批判的に採り上げました。

インターネット上の表現の自由とその限界 -ある裁判例の問題提起-

ネット上の名誉毀損と表現の自由(1)~ある裁判例の問題提起

ネット上の名誉毀損と表現の自由(2)~判決の論理過程について

ネット上の名誉毀損新判断に観るネット観

 まだ判決文を確認していない段階ではありますが、上記報道によれば東京高裁は、ネット上の個人による情報発信に限って名誉棄損の基準を緩和した一審の判断について、「被害者保護の視点に欠けるなど賛同できない」と判断したとのこと。判決は、さらに「ネット上の表現行為は今後も拡大すると思われ、表現内容の信頼度の向上がますます要請される」と指摘して、一審判決を破棄して名誉棄損罪の成立を認めたとのことです。
 この点、私は、一審判決の示した「新基準」に重大な疑問を抱いており(詳しくは上記リンク先の各文献をご参照下さい)、ネット上の個人による情報発信について(仮に被害者側に誘発的言動があったとしても)、直ちに法解釈上真実性の証明・相当性の証明とは別のルールをもって救済すべきとは考えていないので、この控訴審の判断は結論的には真に正論と考えます(追って、判決文が入手できましたら、もう少し掘り下げてみたいと思います)。
 なお、上記文献でも指摘したのですが、そもそもこの事案は名誉毀損罪による起訴に値する事案だったのか疑問が残るものであることを、再度指摘しておきたいと思います。

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海上自衛隊のソマリア沖海上警備行動の是非

海自派遣で正式合意へ=ソマリア沖で海上警備行動-与党PT

【 自民・公明両党は22日午後、国会内で海賊対策に関するプロジェクトチーム(PT)の会合を開き、アフリカ・ソマリア沖に現行の自衛隊法に基づいて海上警備行動を発令し、海上自衛隊の艦船を派遣することで正式に合意する。浜田靖一防衛相が月内にも自衛隊に派遣準備を指示し、海自は早ければ3月にも現地で活動を始める。】(22日時事通信)

ソマリア沖を航行する日本船籍等のタンカーの海賊からの保護は,我が国の国益に照らし非常に重要であることは,どなたにも理解できることと思います。問題なのは,またしても必要論先行で本質的議論による抜本的な解決がなされず,しかも今回は特別法すら制定されないままに,自衛隊が派遣されようとしていることです。

なるほど,自衛隊法の条文上は,防衛大臣は内閣総理大臣の承認の下,海上警備行動として海上での必要な行動を命ずることができ,その際,警察官職務執行法第7条の準用により,一定の相当な理由のある場合に合理的範囲内で武器を使用することができることになります(この場合,人への危害は,正当防衛又は緊急避難の要件を満たさない限り許されません)。

ですが,紛れもなく軍隊としての実力のある自衛隊が派遣されるのですから,航行中に何らかの勢力から組織的攻撃を受ければ,それに対する「正当防衛」名目での武力による反撃がなされるのは当然のことであり,これに対する断続的攻撃が相手からあれば,それに対して断続的に「正当防衛」名目での反撃がなされることも当然ということになります。否,国際政治の場面で,相手の先制攻撃に対する正当防衛を騙って,戦争が開始された例はあまたあり(ナチスドイツのポーランド侵攻は有名です),また,相手に先制攻撃をさせるべく,過度の経済封鎖を行って戦争開始の道筋を付けた例もあります。こうなると,自衛隊の艦船が,治安の悪化している地域に派遣されていること自体,紛争拡大のリスクを背負うことにもなりかねない訳です。

さらに,自衛隊法が海上警備として想定している「海上」が,およそ日本国籍の艦船が航行する限り全世界の海域に及ぶというのも,専守防衛のスタンスとどこまで調和することなのか疑問が残ります。

そもそも,今回の海外派遣が海賊警備目的であり,自衛隊に許される武器の使用の限度が,警察官職務執行法による程度に限定されるというのであれば,海上保安庁の巡視船の派遣の方が目的にかなうものであるようにも思われます。海保では対応しきれない程の武力攻撃の虞があるから自衛隊を派遣するというのであれば,それは海賊対応の域を超えた武力攻撃を受けるリスクを意味することでしょうから,そもそも警察官職務執行法を準用した対応程度で済まされる話ではないはずです。

こうして見てくると,今回の派遣もまた既成事実の積み上げのために,「海賊」を利用している感すら否定できないところなのであって,実際に派遣される自衛隊が本当に我が国の艦船の防衛だけを任務として果たすのかに対する疑問すら生まれてくるゆえんです。

およそ,立憲主義の根本は,国家権力の濫用,暴走に対し憲法の枠で歯止めをかけるところにあるのですから,軍隊としての実力のある自衛隊の海外派遣に当たっては,目的の正当性,手段の相当性を基礎とした派遣の是非を,その都度国会で審議すべきものと考えます。それを内閣総理大臣の承認の下防衛大臣の命令で行わせしめようとするのは,残念ながら満州事変から何も学ぼうとしない姿勢としか思われません。

この問題に対しては,民主党も割れているようですが,建設的な議論のできる二大政党制を目指すのであるならば,必要に応じた改憲論も視野に入れて,立憲主義による国家権力拘束,そしてその濫用防止という最も大事な視点をおろそかにはして頂きたくないものです。

(参考)

【自衛隊法】
(海上における警備行動)
第八十二条  防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。

(海上における警備行動時の権限)
第九十三条  警察官職務執行法第七条 の規定は、第八十二条の規定により行動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について準用する。

【警察官職務執行法】
(武器の使用)
第七条  警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
一  死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。
二  逮捕状により逮捕する際又は勾引状若しくは勾留状を執行する際その本人がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。

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顔写真の無断掲載広告問題

顔写真:無断で広告に CD販売、回収不能--東京の業者

【 商業目的への利用などについて十分な説明のないまま撮影された一般市民の顔写真を、東京の写真素材製造販売会社がCD化して販売し、収録された顔写真を使用した広告主と被写体の間でトラブルが頻発している。勝手に写真に手を加えた例や事実無根の広告に使用したケースもあり、同社は販売を中止。しかし、既に出回ったCDの回収は不可能で、被害は相次いでいる。肖像権を無視した「顔写真ビジネス」のモラルが問われそうだ。】

(4日毎日新聞)

皆様,新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

さて,写真入の年賀状を頂くのは,相手の近況が身近に感じられてよいものですが,今回は相当数の顔写真が収録されたCDが販売され,それを入手した業者が商品の広告にCD収録の顔写真を無断掲載したとのこと。顔写真を提供した側としても,どこまでの利用を許諾していたのかの問題があるほか,全く利用経験のない商品の効能を自分の顔写真に適当な名前・肩書き入りで紹介していたとなれば,詐欺的商法に自己の写真が利用されたことにもなりかねません。

CDはもはや回収困難とのことですが,デジタルコンテンツは流出を止めることが困難なので,そもそも撮影に応じないとのスタンスを取って頂くのが最も手っ取り自衛策なのでしょう。

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