弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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「飛騨牛偽装疑惑」発覚~朝日新聞

「飛騨牛」偽装疑惑 産地の誤り、1年半前に指摘

【「飛騨牛」表示の偽装が指摘されている岐阜県養老町の食肉卸小売業「丸明(まるあき)」(吉田明一社長)が06年11月、卸売先の中部・北陸地方の大手食品スーパーから「(牛肉の)産地に誤りがある」と、牛肉トレーサビリティー法違反の可能性を指摘されていたことが23日、朝日新聞が入手した内部文書などから分かった。納入したスジ肉の半分を廃棄しなければならなかったことも判明した。こうした指摘について、農林水産省は日本農林規格(JAS)法に抵触する恐れもあるとしている。】(23日朝日新聞)


またしても,食の安全とブランドを害する事件が起こりました。朝日新聞の報道によれば,今回報道されている飛騨牛偽装疑惑は,既に1年半前に取引先から是正の要望を受けていたものであるとのこと。丸明食品の吉田明一社長が記者会見で「偶然ラベルを張り間違えたか、従業員が勝手にやった」と弁明する一方で,従業員側が記者会見を行う動きがあるとの報道もあり,今後の展開が注目されます。

こうしたコンプライアンス上の問題についての一般論を申し上げれば,不祥事の隠蔽は一時の利益となっても最終的には企業を葬り去ることにすらなりかねないものとの点が挙げられます。事実関係は追って明らかになるでしょうが,不祥事を小出しに認めるような展開は,決して企業にとってプラスにならないことだけは指摘しておきたいと思います。

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鳩山法相の「死に神」報道と死刑廃止論

鳩山法相、「死に神」報道に反論

鳩山法相の下,死刑執行が相次いでいる点が注目されています。

本日は,先日に続いて,死刑廃止論についての私見を申し上げたいと思います。

結論的には,私は死刑廃止派です。死刑廃止の条件として一般に取りざたされる終身刑の導入については,運用上個別恩赦の余地が残されていることを前提として,その先行実施には賛成します(この結論は,尊敬する刑法学者の団藤重光先生の結論とほぼ同旨です)。この点,個別恩赦での出所後の社会復帰の可能性には疑問がないではなく,この枠組みが万全のものとは確信できないのですが,生命という究極の価値を否定する死刑の廃止という大義の実現を優先するためには,ベターな選択肢ではないかと考えます。以下,理由を述べます。

人間の生命を否定する刑罰が,その実施方法の如何を問わず「残虐」な刑罰であることは,人間の尊厳を至高の理念として掲げる自由主義憲法の下では,当然のことと確信します。平和憲法の下,人間の生命を奪う戦争を許さない基本理念に立ちながら,犯罪に対する刑罰としての死刑なら許容されるというのは,国家のあり方として既に矛盾していると思います。犯罪に対する刑罰としてなら生命を奪うことも許されるというのであれば,侵略に対する制裁としての軍事行動が許されない現状には,むしろ違和感さえ覚えるところです。

死刑を廃止すれば,重大犯罪が増大する虞があるとの指摘については,そもそもそのような統計的なデータが検証されている訳ではありませんし,効果が検証されていないのであれば,そもそもそのような刑罰を導入・維持すべきではないというのが本筋というものでしょう。

被害者・遺族の処罰感情には,もちろん最大限の配慮をしなければなりません。殺害されたご本人や自分の愛すべき家族が奪われたご遺族の心中を察するに,論評すること自体はばかられることすらあります。しかし,それらの方々への配慮は,死刑による報復という形でしか実現できないものでしょうか。例えば,国や地域社会において,失われた生命を悼み,遺族の方々を慰撫するような配慮をいかに実現できるかもまた,重要ではないでしょうか。被害者遺族の手記で,死刑囚との対話の際に謝罪の言葉を直接受けて安堵感を得ることができたと述べられた方もいらっしゃいます(現代思想2004年3月号原田正治氏「弟を殺した加害者と僕」)。最後まで反省の弁を述べることなく死刑になった死刑囚もいることと思いますが,死刑囚の拘留は更生を前提としないものであり(だからこそ刑務所ではなく拘置所に身柄を置かれます),反省に向けたプログラムを前提としていません。むしろ重大犯罪の犯人であればこそ,いかに反省させ,悔悟の日々を送らせるように導くかが,刑事司法の任務なのではないでしょうか。

死刑が執行されてしまえば,その後にえん罪と判明しても,生命は取り戻せません。もちろん長期の拘留による失われた日々もまた取り戻すことはできませんが,生命の価値の重さを思えば,いかなる誤判によっても生命が失われないという結論は極めて重いものだと思います。裁判員制度の下,裁判員の全員一致の場合にのみ死刑の言い渡しが可能な立法案も注目されています。しかし,裁判員がどれだけ世論や他の裁判員や裁判官の意見に流されずに判断を下せるのかについては,未だ想像の域を出ません。

再犯防止の観点に立っても,終身刑の導入によって,その趣旨はよく達成されることでしょう。この点,二度と社会に復帰できない刑罰はそれ自体「残虐」であるとの批判があります。しかし,死刑囚にとって最も酷なのは,いつ死刑に処せられるかの不安であるとの指摘もあり,決して処刑されることのない安堵感がある終身刑を「残虐」というべきかは議論の余地が大きいところです。少なくとも終身刑の「残虐」性は,死刑のそれと比較してその程度において決定的な差異があるのではないでしょうか。

この点,仮に個別恩赦の余地があるとしても,長期の刑務所生活がいわゆるムショぼけを生じ,社会生活には戻れないような人格を形成してしまうとの批判があります。いかに反省と悔悟の日々を送ったとしても,社会復帰にはじまないような人格を形成することが,更生という観点からどれだけの意味を持つかについては,確かに疑問が残ります。それ故にこそ,私は終身刑+個別恩赦という枠組みの対応において確信を抱けないのです。しかしながら,死刑の廃止という大義の前に,手段的に終身刑を検討することは,やむを得ない判断なのではないかと思料するところです。

皆さんご存じの通り,EU諸国を中心に先進国のほとんど全てにおいて既に死刑が廃止されています。逃亡犯罪者の引き渡しに際しても,死刑に処せられることのない保障を死刑廃止国側から求められる事態が生じたことが現にあります。そうした際,三権分立の制度下では,政府は個別裁判の結果について何らの保障ができないわけですから,後は死刑自体を廃止する(少なくとも段階的にまずその執行を停止する)という手段を取るほかないことになるでしょう。そうしなければ,国内から逃亡した犯罪者を国内で処罰すること自体が困難となり,結果として我が国の秩序の維持を困難ならしめると共に,被害者・遺族を始めとする国民の当然の処罰感情への配慮もできないところとなってしまう虞があります。グローバリゼーションの下,そのようなリスクは高まる一方であることを軽視してはならないと思います。

戦争についてもいえることですが,復讐の視点に立って物事を考えてみても,悲劇の繰り返しになって人々の心が癒されることにはならないことでしょう。重大事犯の犯人だからこそ,より深い反省と悔悟の日々を送らせるように導く必要があると思います。私は死刑は速やかに廃止すべきと考えます。


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死刑廃止論の是非

昨日,幼女連続誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚に対する死刑が執行されました。

宮崎死刑囚 刑執行 20年前の衝撃、今も あきる野(18日読売新聞)

改めて被害者の方々のご冥福をお祈りします。
この事件についての言及はおくとして,今日は「死刑」という点に関して,死刑廃止論の是非を考えてみたいと思います。

この問題を考える上で,論者の多くの方々の述べる論拠をざっと挙げてみましょう。


(1) 【死刑を廃止すべきとの立場】

(憲法上の根拠) 死刑は,憲法36条が禁止する残虐な刑罰に当たる。
(応報の側面) 被害感情には配慮するべきであるが,応報だけでそれが十分果たされる訳ではない。犯罪被害者保護制度の拡充も重要である。
(一般予防の側面) 死刑を廃止した国や州(米国)において,重大犯罪が増加した事実はない。
(再犯防止の側面) 終身刑の導入など,出所後の再犯防止手段は別途考えられる。
(裁判手続上の危惧) 裁判には誤判の虞があり,事後的に誤判と判明した場合,死刑は取り返しがつかない。
(比較法学的考察) EU諸国を中心に先進諸国では死刑はほぼ廃止されている。
(犯罪人引き渡し上の困難) 死刑制度を有する国に対する死刑廃止国からの犯罪人引き渡しが,拷問の禁止などをうたう欧州人権条約3条に抵触することを理由に拒絶される事態が生じている。


(2) 【死刑を存続すべきとの立場】

(憲法上の根拠) 死刑は,憲法36条が禁止する残虐な刑罰に当たらない。
(応報の側面) 応報の観点(罪に対する罰)に立てば,殺人などの重大事件で死刑は当然である。/被害者及び遺族の報復感情に配慮すべきである。
(一般予防の側面) 死刑を廃止した国や州(米国)において,重大犯罪が増加したかどうか判然とはせず,その増加が懸念される。
(再犯防止の側面) 死刑は再犯防止に最も実効的である。
(裁判手続上の危惧) 誤判の虞は,裁判制度自体のあり方の問題である。裁判員制度では裁判官・裁判員の全員一致を死刑宣告の要件とする立法案も検討されている。
(比較法学的考察) 死刑を存置する国は世界にまだ数多く存する。各国の文化・宗教観・道徳観の相違は軽視できない。
(犯罪人引き渡し上の困難) 犯罪人引き渡しの上での支障については,各国に理解を求めるしかない。


この件に関する私見は,また後日ご紹介します。

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成立した青少年有害サイト規制法とその運用への懸念点

このブログでも度々採り上げてきた「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」案が本日の参議院本会議で可決成立しました。詳細は下記をご覧下さい。

「青少年ネット規制法」成立(11日ITメディアニュース)

この法律の概要としては,次のような点が挙げられます(なお,参議院で可決された法律案の条文は未入手ですが,衆議院法律案からの重要な変更はないようです)。

・有害情報の定義については,「青少年有害情報」とは、インターネットを利用して公衆の閲覧(視聴を含む。以下同じ。)に供されている情報であって青少年の健全な成長を著しく阻害するもの」とした上で,例示列挙をするに留めていること。

・内閣府に、インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議を置き,青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策等を審議すること。

・携帯電話インターネット接続役務提供事業者は、契約の相手方又は携帯電話端末の使用者が青少年である場合には、青少年有害情報フィルタリングサービスの利用を条件として、携帯電話インターネット接続役務を提供しなければならないこと(ただし、その青少年の保護者が、青少年有害情報フィルタリングサービスを利用しない旨の申出をした場合は、この限りでない)。

・インターネット接続役務提供事業者は、インターネット接続役務の提供を受ける者から求められたときは、青少年有害情報フィルタリングソフトウェア・サービスを提供しなければならないこと。

・青少年有害情報フィルタリングソフトウェアを開発する事業者等は、青少年有害情報であって閲覧が制限されないものをできるだけ少なくするとともに、(1)閲覧の制限を行う情報を、青少年の発達段階及び利用者の選択に応じ、きめ細かく設定できるようにすること、(2)閲覧の制限を行う必要がない情報について閲覧の制限が行われることをできるだけ少なくすることに配慮して青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又はサービスを開発又は提供するよう努めなければならないこと。

・サーバ管理者は、その管理するサーバを利用して他人により青少年有害情報の発信が行われたことを知ったとき又は自ら青少年有害情報の発信を行おうとするときは、当該青少年有害情報について、インターネットを利用して青少年による閲覧ができないようにするための措置(以下「青少年閲覧防止措置」という。)をとるよう努めなければならないこと。

・青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの性能の向上及び利用の普及を目的として、青少年有害情報フィルタリングソフトウェア・サービスに関する調査研究・普及及び啓発業務,同ソフトウェアの技術開発の推進業務を行う者は、総務大臣及び経済産業大臣の登録を受けると共に,大臣はその業務の状況に関し報告又は資料の提出を求め,その登録取り消し権限を有すること。

衆議院提出時の法律案はこちら

以上の概要を観ての私見を述べさせて頂きます。

(1)登録制のフィルタリング推進機関との関連での,有害性判断への国の間接的関与に対する懸念

この法律は,法案策定過程において,有害情報を国側が規定する内容から,例示列挙に留めてフィルタリング事業者の判断に委ねる方向に変更がなされました。有害性を直接国側が判断する仕組みではなくなったとはいえ,登録制のフィルタリング推進機関制度との関連で懸念するところがないではありません。すなわち,フィルタリング推進機関制度は,フィルタリングに対する国の関与を認めるものですから,フィルタリングの判断内容に関して国が干渉する余地がある限り,有害性判断への国の間接的関与を許すことになります。条文上は,「フィルタリング推進業務の適正な運営を確保するために必要な限度において」の関与とされていますが,もっと明確にフィルタリングの判断内容に関する関与を許さないように規定すべきだったと思いますし,今後の省令の制定や運用に当たっても,その方向を意識して頂きたいところです。

(2)段階的フィルタリングと,有害性判断に際しての実体・手続両要件への配慮の重要性

繰り返し述べてきたように,フィルタリングを民間事業者に委ねるとしても,同事業者が有害と判断した情報は青少年の閲覧ができなくなる訳ですから,条文にもあるように「青少年の発達段階及び利用者の選択に応じ、きめ細かく設定できるようにすること,(2)閲覧の制限を行う必要がない情報について閲覧の制限が行われることをできるだけ少なくすること」への配慮をしっかり行って頂く必要があります。有害性判断の内容とその判断過程,フィルタリングで排除される情報提供者等の異議申立手続などへの配慮は重要です。

(3)将来のより強い規制に対する懸念

この法律は,現時点での民間努力の可能性を大前提として,緩やかな規制に留めた要素が強いですから,今後の民間努力の状況次第では,より強い規制に発展する虞が否定できません。民間努力の重要性が強く認識されなければならないといえます。

ただ,私はこの点を否定的にばかり捉える必要はないと思っています。なぜならば,より緩やかな段階的規制でも効果を揚げられないことが確認できたということこそが,表現の自由に対するより強い制限を正当化する何よりの根拠となるのであって(いわゆるLRAの原則(より制限的でない規制手段の不存在を規制側が立証しない限り違憲とする,表現の自由規制立法の合憲性判定基準)を参照),反対にいえば,緩やかな規制で成果が上がった以上は,それ以上の規制を正当化することができないからです。ぜひ関係事業者の皆さんの自主的努力による成果により,次なる規制へと進まないよう期待したいところです。

関連記事:衆院通過した「青少年ネット規制法案」に新聞協会が懸念表明(6日ITメディアニュース)

関連リンク:いわゆる「青少年ネット規制法」が成立、どのような影響が今後考えられるのか?(11日GIGAZINE)

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荏原製作所、社外監査役大森義夫氏が事業報告を不承認

荏原製作所、監査役1人が08年3月期事業報告を承認せず

<荏原製作所は6日、2008年3月期決算の監査報告書で監査役の1人が「コンプライアンス上、重大な疑義があるので、事業報告を承認しない」とする意見を付記したことを受け、27日開催の定時株主総会で計算書類を決議事項として上程すると発表した。>(6日時事通信)



荏原製作所については、昨年会社資金の不正支出事件が報じられ、会社側もその事実を早くから公表しています(詳しくは、「会社資金の不正支出に関するお知らせ」をご覧下さい)。

今回は、社外監査役の大森義夫氏が同事件の調査が不十分で、経理帳簿に虚偽の疑いがあるとして決算を承認しなかったとのことです。同社では会計監査人の監査法人が適正意見を出していたこともあり、大森氏の不承認がなければ定時株主総会では決算報告議案となるべきところ、決算承認を株主に問う異例の事態となりました(同社の第143期定時株主総会の決議事項に関するお知らせはこちらです)。

7日付けの日経新聞では、大森義夫氏のコメントとして、情報開示やヒアリングの要請に関係者の協力が得られなかったことが報じられ、これに対して会社側からは協力しなかったことはないとの社長コメントが紹介されています。

大森義夫氏は、警視庁公安部長、警察大学校校長、内閣情報調査室長、外務省「対外情報機能強化に関する懇談会」座長などを歴任され、日本政府のインテリジェンスや危機管理のあり方についても、積極的に発言されている方です。今回の事件の真偽は定かではありませんが、大森氏が同社に招聘されたのは、企業のコンプライアンス経営実現のために同氏の経験やインテリジェンスのノウハウが必要との認識に立ってのことでしょう。インテリジェンスの観点からは、情報の取り扱い方は非常に重要な意味を持ちますが、およそ上場企業である限り、株価に影響を及ぼすような重要情報は速やかに適時開示すべきものです。また、危機管理の観点に立っても、いったん生じた不祥事についての調査は、企業への信頼を回復するための手段として、徹底的に行われなければならないものです。そのためには企業トップのコンプライアンス実現に向けた決意が非常に重要なキーワードとなります。これを欠いたがために、市場の信頼を失った企業は挙げればキリがありません。

専門家の名前だけ拝借してコンプライアンスらしさの隠れ蓑にしてしまうようなことはコンプライアンスの観点からあってはならないことであり、その意味で今回の会社側の調査がどこまで真実を明らかにする意図をもって行われたものなのか、その内容の適正も含めて、来る27日に予定される株主総会での議論が注目されるところといえます。

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グッドウィル二重派遣で手数料授受の疑い

グッドウィル二重派遣,2社で手数料分ける

<日雇い派遣大手、グッドウィル(GW、東京・港)を巡る二重派遣事件で、GWと派遣先の港湾運送会社、東和リースが労働者を1人派遣するごとにそれぞれ約5000円の手数料を得ていたことが3日、警視庁保安課の調べで分かった。同課は両社が違法性を認識しながら二重派遣を繰り返し、継続的に収益を得ていたとみて調べている。>(4日日経新聞)



グッドウィルが,港湾運送関連会社東和リースに労働者を派遣し,同社がさらに別の港湾会社に労働者を二重派遣した問題では,職業安定法で禁止される二重派遣について,グッドウィル側に幇助(手助けすることです)の疑いがあると報じられていましたが,ここにきて東和リースが二重派遣をする毎にグッドウィル側が手数料を得ていたとの上記報道が出てきました。これが真実であれば,グッドウィル側に二重派遣の認識があったことは争えないところとなることと思います。

そもそも,労働者派遣法は港湾運送等の危険が伴う現場への派遣を許してはいませんし,また,二重派遣となれば中抜きで労働者の賃金が大幅に減額されるほか,雇用の責任も不明確になります。何より,グッドウィルのように大規模に事業展開する事業者がこのような行為を行うことで,実質的に労働者の労働環境の劣悪化に対して相当程度の影響が及ぶ可能性は顕著に感じられるところです。

目先のつまらない利益に走るのではなく,業界のリーダー的存在としての自覚を持って責任を果たして頂きたいものです。

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携帯有害サイト規制、与野党合意と今後の課題

携帯有害サイト規制、与野党合意へ

<携帯電話の有害サイトから青少年を守るための対策について、与野党は2日、国会内で実務者協議を開き、対策新法案に合意した。特定のサイトを見られなくする「フィルタリングサービス」の導入を携帯電話各社に法的に義務付けることが柱。各サイトの健全性を巡る基準づくりや判断は民間の第三者機関に委ねる。国の関与を最小限にとどめることで、最終的に折り合った。>(3日日経新聞)


度々、このブログで触れてきた青少年有害情報規制法案ですが、6月2日与野党合意に達したとのことです。

この問題では、自民党の議員立法案が従前、有害情報の認定を行う機関を国が指定することとしていたのに対し、民主党側が民間の判断に委ねるべきとして対立してきました。

国(あるいは国の指定する機関)が、情報の有害性を選別してその閲覧を制限することは、知る権利に対する制限ともなりますから、慎重な対応が求められることは、既にこのブログでも述べてきました。

有害情報の選別を民間努力に委ねる点は、知る権利に対する直接的な制限を回避するという点では、歓迎すべきものと思います。

ただし、フィルタリングが義務づけられることになる点では、子どもの知る権利との微妙な問題は残ります。子どもが知りたい情報を知ることができなくなる点には、変わりがないのです。仮に、発育の程度に照らして本来シャットアウトする必要のない情報まで含めて、広範にフィルタリングをかけるようなことになると、民間同士とはいえ知る権利の不当な制限として、不法行為(民法709条)に該当する事態も起こり得ない訳ではありません。

有害性を民間の判断に委ねるといっても、ある機関の判断が業界標準となることで、事実上子どもの知る権利に対する制限の範囲が決定されることにもなるのですから、有害性の判断に際しての内容面での判断の適正と、その判断を行うための手続における公平性の担保や不利益処分を受ける業者の異議申立等の手続保障については、慎重に検討して頂きたいと思います。特に、子どもの発育の程度に応じた段階的な対応にはぜひ配慮して頂き、杓子定規な規制とならないよう期待したいものです。

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「小中学生の携帯使用制限」とは!?

小中学生の携帯電話使用制限を提言

<政府の教育再生懇談会(座長・安西祐一郎慶応義塾塾長)は26日、首相官邸で会合を開き、有害情報から子供を守るため、携帯電話を小中学生に持たせることがないよう保護者や教育関係者が協力することを盛り込んだ第1次報告をまとめ、福田康夫首相に提出した。英語教育の小学3年からの必修化を目指し、全国でモデル校を5000校規模で設けることも提言した。>(26日産経新聞)



この記事を観て最初に思ったことは、「この期に及んで臭いものに蓋ですか!!」との思いでした。
今時の小中学生は、放っておいてもツールとしての携帯電話になじんでしまうものです。タスポカードを子どもに貸した困った母親の事件が報じられていましたが、いくら制限しようとしても結局は(誰かの)携帯電話あるいはPCを通じて有害情報に接することになるのではないでしょうか。子どもに携帯電話を持たせないというだけで解決できる問題とは到底思えないのです。

この点,現状でもキッズ携帯のように、子どもの用途にあった制限を課すことのできる機種があるわけですから、制限のあり方もその実態を汲む必要があります。

それのみならず、むしろ教育のあり方としては、様々な有害情報とどう接するかを教えることこそが重要なのではないでしょうか。例えば、たまたま子どもが残虐映像を観てしまったとして、その時、マニア的な興味だけで終わらせてしまうのか、それとも生命の尊厳を問いかけるのかによって、その子どもの精神の発育の方向性は全く違ってくることでしょう。また、18歳まで純粋培養してそこでいきなり有害情報デビューとなることで、それ以降に(自身の判断とはいえ)被害に遭うような事態が望ましいとも思いません。

子ども達にいかに生きるための力を養成するかが、偏差値教育以上に教育に求められることではないでしょうか?

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船場吉兆の従業員解雇と「使い回しが発覚しなかったワケ」

船場吉兆の廃業と従業員の解雇は既に先日触れましたが、昨日会社側から解雇された仲居さんの記者会見で、船場吉兆の使い回しが十数年前から常態化していたとの事実が報じられましたので、再び取り上げてみたいと思います。

→ http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080531/crm0805312253023-n1.htm

いつから使い回しが始まったのか、事の真偽は今後争われる余地もないではないので、ここではおくことにしますが、むしろコンプライアンスの観点から、(いつから始まったにせよ、昨年の牛肉原産地偽装の頃には常態化していたとされる)使い回しが、なぜ最終盤に至るまで発覚しなかったのか、その要因としてどのようなものがありうるかを考えてみましょう。

要因として、まず真っ先に可能性が伺われるのは、前社長を始めとする経営陣の業務指示等の強い関与の存在です。これまでの数々の記者会見においてこの点が指摘されておりますが、経営者がワンマン経営をする企業であればあるほど、社員は逆らうことができないため、違法・不正行為が継続する可能性があります。

また、吉兆というブランドが最大の隠れ蓑になったことも否めません。まさか使い回しなどするはずがないという世間の信用がありますから、実際に食事の現場で使い回しの品を出されたお客さんもきっと疑問に思わなかったのではないでしょうか(というのも「使い回しではないかと思っていた」という声が聞こえてきませんから)。

一方、従業員側として、組織防衛に走るべき事情がなかったのかどうかも気になります。上記の記者会見では、仲居さんが「就職難でようやく見つけた居場所。気づいたら感覚が麻痺していた。」と話したと報じられていますが、従業員の利害と組織の利害が一致してしまうと、従業員としても正義心をおいて違法行為にも目をつぶってしまうことが起こり得るところとなります。

公益通報者保護法制の整備がここ数年のことであることも、発覚が阻止された要因として考えられます。違法・不正な業務指示に対して、その時点で直ちに通報できる体制がなければ、それらの行為がいつしか常態化してしまうことも避けられなかったことでしょう。当然ながら、船場吉兆には、自ら自浄作用を発揮するための内部通報制度などなかったようですから、もし従業員が外部に告発などすれば、その後の雇用がが危ぶまれる事態に至ったことは自明の理となります。


ところで、このような違法・不正行為による利益というものは、前回も指摘しましたが、恐ろしいほどの損害発生のリスクを無視した目先のものでしかありません。現代では、食の安全の意識の向上や消費者の権利意識の増大などにより、違法・不正行為を行った企業が受ける社会的制裁は非常に重大なものとなっています(船場吉兆も廃業となりました)。しかも、企業のコンプライアンスや社会的責任の要請、能力主義人事の導入などがあいまって、従業員は違法・不正な業務指示に従うよりは、それを外部告発する時代になっています。従業員としても違法行為に加担して自身のキャリアに汚点を残したくはないのです。となると、違法・不正行為の発覚確率も自ずから高くなっているといえる訳です。


それでは、どうすればもっと早く自浄作用を発揮できたのでしょうか。この点、「発覚しなかったことの要因」は、「自浄作用を発揮できなかった要因」でもありますから、先の各要因から容易にひもとくことができそうです。

まず、一番大きいところが食品偽装に関する経営陣の意識の点です。食品に関する内部告発事件は後を断ちませんが、食の偽装は今に始まったことであるはずがなく、これまで発覚しなかったことが発覚するようになっただけのことであることは、どなたにもご理解頂ける事と思います。船場吉兆でも、前社長始め経営陣が時代の流れの変化にもっと敏感に気づいておれば、もっと早く自主的に改善する余地がなかったとはいえないことでしょう。

また、従業員においても、結果的に廃業に至って退職金その他の労働債権の保護に不安を生じるような事態に陥るのは最悪の結果です。それよりは、声を大にして内部告発をする方が、たとえ企業が一時的に多大な社会的制裁を受けるとしても、まっとうな企業として更生する道を歩むことになり、従業員の雇用確保とキャリア維持のためにもなるという点を、正面から意識すべきでしょう。もちろん、実名告発が自身の解雇への危惧感から困難なのはよく理解できるところですから、官公庁やマスコミなどにおいても真摯な匿名通報はしっかり受け止める必要性があります。

そして、企業のコンプライアンス確立のためのシステムとしての内部通報制度を、企業が自ら積極的に運営することもまた、自浄作用発揮のための重要な要因となります。反対にいえば、それを積極的に運営しようとしない企業では、社内的にも対外的にも自浄作用発揮への信頼を得にくい状況にあることを忘れてはいけません。


企業経営者の方も、従業員の方も、船場吉兆事件を対岸の火事として眺めるのではなく、ぜひ今後の教訓として生かして頂きたいものです。


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