弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

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「目くらまし解散」に異議あり!

消費税引き上げ延期を国民に問うための解散総選挙という論法に納得できない方も多いことでしょう。私もその一人です。元々消費税増税については,経済・消費の動向を見据えての判断が前提になっている上,実際に国民世論の中で増税を当初通り実施すべきとの意見がほとんど観られない中では,増税延期は十分な説明に基づく政策判断として許されるべきものというべきでしょう。

むしろ,この論法が隠れ蓑であって,アベノミクスの政策効果に陰りが見える中で政権延命を図るための早期の一手であることは誰の目にも明らかです。いやそれ以上に,この選挙で勝利した後は,あえて選挙戦では争点として採り上げようとしていない集団的自衛権行使容認,特定秘密保護法の導入,原発再稼働といった最重要課題におけるこれまでの政府の対応について,国民の全面的な信任を得たと強調することでしょう。選挙までの間はひたすら国民の味方として消費増税延期を高らかにうたい,シングルイシュー選挙を印象づけて得票につなげ,それ以外の問題については議論を高めることも説明責任を果たすことも積極的にはしないというスタンス感が,よく見えています。このようなスタンス感は,遺憾ながらおよそ立憲民主主義と呼べるようなものではありません。国民的議論を巻き起こすことなく,そこでの批判を最大回避し,寝た子は起こさずに長期の委任だけもらおうとする政治手法は,さながら目くらまし忍法とでもいうべきものです。

安部政権のこれまでの政権運営には課題毎に是々非々で議論があって然るべきであり,その議論と批判を避けようとすること自体,民主的ならざる政府と評さざるを得ません。集団的自衛権行使容認の閣議決定の際にも強調しましたが,政治に対する憲法の歯止めを空洞化させることは,国民の民主的コントロールの機会を奪い,政治家フリーハンドを実現することです。過去の我が国の暴走は軍部によって行われましたが,今度は選挙の機会を経て暴走することにもなりかねません。ヒトラーがそうであったように。その際,特定秘密保護法は政治批判の回避手段ともなり得るところなのです。

大切なことは,イベントしてのシングルイシュー選挙ではなく,重要政策についての議論を深め争点を浮き彫りにした上で国民の審判を仰ぐことです。その姿勢の先にあるのは,人権を守り,少数意見にも配慮しつつ,最大公約数を見出そうとする立憲民主主義の本旨であり,それこそがまさに憲政のあるべき姿なのではないでしょうか。
                                       
弁護士 田島正広

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原子力損害・第二次指針における懸念点

東京電力の福島第一・第二原発事故については、原子力損害賠償紛争審査会から本日までに原子力損害の範囲の判定等に関する指針が第二次指針・追補まで示されています。

東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針

原子力損害賠償紛争審査会

注目されるのは、風評被害について、踏み込んだ姿勢を示している点です。該当箇所を引用すると次の通りです(下線は筆者)。

「(指針)
Ⅰ) いわゆる風評被害については確立した定義はないものの、この指針で「風評被害」とは、報道等により広く知らされた事実によって、商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念し、消費者又は取引先が当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた被害を意味するものとする。
Ⅱ)「風評被害」についても、本件事故と相当因果関係のあるものであれば賠償の対象とする。その一般的な基準としては、消費者又は取引先が、商品又はサービスについて、本件事故による放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合とする。
Ⅲ) 具体的にどのような「風評被害」が本件事故と相当因果関係のある損害と認められるかは、業種毎の特徴等を踏まえ、営業や品目の内容、地域、損害項目等により類型化した上で、次のように考えるものとする。
① 一定の範囲の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害(Ⅳ)に相当する被害をいう。以下同じ。)は、原則として本件事故との相当因果関係が認められるものとする。
② ①以外の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害を個別に検証し、Ⅱ)の一般的な基準に照らして、本件事故との相当因果関係を判断するものとする。その判断の際に考慮すべき事項については、この指針又は今後作成される指針において示すこととする。
Ⅳ) 損害項目としては、消費者又は取引先が商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた次のものとする。
① 営業損害
取引数量の減少又は取引価格の低下による減収分及び合理的な範囲の追加的費用(商品の返品費用、廃棄費用等)
② 就労不能等に伴う損害
①の減収により、事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収
③ 検査費用(物)
取引先の要求等により実施を余儀なくされた検査の費用」

ここで、備考においては、次のような解説があります。すなわち、「少なくとも本件事故のような原子力事故に関していえば、むしろ必ずしも科学的に明確でない放射性物質による汚染の危険を回避するための市場の拒絶反応によるものと考えるべきであり、したがって、このような回避行動が合理的といえる場合には、原子力損害として賠償の対象となる。」

この点に関して、同審査会の中島肇先生の解説されたところによれば、規制値の低い牧草の出荷制限が課せられる地域においては、規制値が高いため出荷制限には至らなかった他品目の農作物も、放射能汚染を懸念されて市場が買い控えることがむしろ合理的であり、したがって、当該別品目の農産物が本来の対価で販売できないことによる減収分なども風評被害の対象となるとのことです。

中島先生が解説の際に言及された原子力損害の先例として実務上参照される名古屋高裁金沢支部平成元年5月17日判決においては、「数値的には安全でその旨の公的発表がなされても、消費者が危険性を懸念し、敦賀湾産の魚介類を敬遠したくなる心理が一般に是認でき」る場合には、通常損害として、(特別損害と異なり加害者側の予見可能性を要することなく)相当因果関係を肯定した訳ですが、上記指針はまさにこの理を本件にあてはめたものと解される訳です。評価が難しい風評被害について踏み込んだ指針という点で、被災者の方々の救済に資する指針としての一定の評価がなされるべき指針と思います。

ところで、指針を読んで非常に気になるのは、農林漁業の風評被害に関して、農林産物(畜産物以外のもの)、畜産物、水産物の3類型に分けて、風評被害が通常及ぶ範囲をそれぞれの類型の範囲内と見ている点です。原文によれば、次の通りです。

「(指針)
Ⅰ) 農林漁業において、本件事故以降、現実に生じた買い控え等による被害のうち、少なくとも次に掲げる産品に係るものについては、1Ⅲ)①の類型として、原則として本件事故との相当因果関係が認められる。
① 農林産物(畜産物を除く。)に係る政府等による出荷制限指示等(平成23年4月までのものに限る。)が出されたことがある区域(県又は市町村単位。以下同じ。)において産出された全ての農林産物(畜産物を除き、食用に限る。)
② 畜産物に係る政府等による出荷制限指示等(同年4月までのものに限る。)が出されたことがある区域において産出された全ての畜産物(食用に限る。)

③ 水産物に係る政府等による出荷制限指示等(同年4月までのものに限る。)が出されたことがある区域において産出された全ての水産物(食用に限る。) 」

この理によれば、ある地域で牧草の出荷が制限されたことによりトマトが売れなくなれば、相当因果関係のある損害となりますが、同じ地域の畜産物の出荷が何ら制限されていない以上は、その地域の牛が売れなくても、直ちには相当因果関係のある損害とは認定されないことになります。

図らずも、直近で牛について、放射能が検出された稲わらに起因する出荷制限が行われていますが、この段階に至るまでの間でも、東北産のA5ランクの牛がこれまでにないほど安くなっているとの情報が巷を飛び交っていました。すなわち、畜産物の出荷が制限されていなくとも、畜産物が売れない状況が既にあったのではないかと推測される訳です。同じことは水産物についても検討しなくてはならないように思います。

上記指針は冒頭部分で、指針で対象とされなかった損害を賠償すべき損害から除外するものではなく、今後検討すると言及しているのですが、この指針が果たす役割を考える時、果たして市場心理が農林産物の3類型間を超えて買い控えを起こさないことが通常なのかどうか、改めて検討を要するように感じます。


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消費税増税と還付問題

菅首相:消費増税 低所得者、全額還付も 年収水準に言及

【 菅直人首相は30日、山形市内での参院選街頭演説で、消費税率を引き上げた場合の低所得者対策について「年収300万円、400万円以下の人には、かかる税金分だけ全部還付する方式(もある)」との考えを示した。】

(6月30日毎日新聞)

 消費税増税の方向性を示す中で,菅首相が表した低所得者向け逆進性緩和策としての「消費税還付」の手法には,様々な批判が寄せられています。その対象世帯の所得額が揺れていることが,これに拍車をかけている印象があります。

 この点,私は,公平な課税である消費税を増税しつつ,直間比率の見直しや低所得者向け対策としての生鮮食料品等の日常品への課税・税率の見直しを行うことには賛成ですが,消費税の還付という発想には賛成できないところです。

 今,この国が置かれた財政の窮状を救える手段として早期の消費税増税以外にどのような手法があるのか私は分かりません。GDPの成長をもって赤字部分をまかなえるとの主張もありますし,無駄をなくせばなんとかなるとの主張もありますが,現実味を感じないのが昨今の現状です。その意味で消費税増税自体はやむを得ないところと思います。

 ところで,低所得者向けの逆進性緩和策をどうするかの点がその際の論点です。この点,現在は,よほどの零細商店を除けばPOSシステム等を用いた売り上げ管理体制が導入されており,生鮮食料品限定の消費税非課税or減税措置を取ることは容易です。本来,消費税導入段階で,なぜ生鮮食料品等の日常品に課税するのかの議論があった訳ですが,当時と今とでは,議論の背景となる商品流通管理の実情が異なる点には注目していいと思います。それに加えて,そういった管理対応が困難な零細商店は現在でも売り上げ1000万円以下なら消費税納税義務がないところですから,課税の複雑化の影響は直接及ぶところではないでしょう(もし必要があれば,いったんは縮小された納税義務を負わない範囲を再び一定範囲で拡大することは,別段難しいことではないはずです)。

 これに対して,消費税の還付を行う場合,そもそも何をもって還付を申請するのか不明で,低所得ながらあまり消費をせずに生活しつつ,給料のほとんど全てを消費した等と申告する方をどう扱うのでしょうか。結局,一律の還付になるのでしょうが,それ自体効率よく課税して小さな政府を志向するための仕組みである消費税制度をもって,還付制度に伴う面倒な事務処理付きの大きな政府に向かわせることにもなり,行政コストを上昇させる結果,なんのために消費税を増税するのかも不明という事態になりはしないでしょうか。既にある生活保護の仕組みと併存させることの意義もよく分かりません。それに,還付の対象に外国人も含まれるなら,還付目当ての入国も懸念されます。

 選挙期間中ということもあって,少しでも国民の期待に応えたい気持ちがあるのは分かりますし,船出したばかりの政権ですから,引き続き期待をしたいところでもあります。その意味でも制度設計は慎重にして頂きたいものです。


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若林正俊元農相議員辞職問題

自民・若林参院議員が辞職=偽装投票で引責-計10回、「魔が差した」

新人議員ならまだしも,元農相という大物議員の軽はずみかつ重大な不祥事だけに,真に遺憾です(イカンです!)。学生の代返のノリだったのでしょうか。これで通るなら,議場に来ない議員が続出する訳ですから,およそあり得ないことです。既に議員辞職されていますが,これで幕引きとするには違和感がなくはありません。隣席の青木議員からの依頼がなかったのかどうかについて,調査を尽くす必要があるのではないでしょうか。そのためにも参考人として若林氏を国会で喚問すべきように思います。本人に対するペナルティの趣旨も込めて。
国会議員の職責の重みを一瞬でも軽んじてしまうことのないように,現役議員の先生方には戒めとして頂きたいものです。

弁護士 田島正広

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「一票の格差」と「地方の利益」

1票の格差:2倍「違憲」 「1人別枠」廃止、焦点に 与野党、意見集約難航か

【 8月の衆院選小選挙区間の「1票の格差」をめぐり、2倍を超える格差を初めて違憲と判断した28日の大阪高裁判決は、国に制度の根本的な見直しを促す内容となった。小選挙区比例代表並立制が導入された96年以降、選挙区の区割りが調整されたのは02年8月の1回だけで、2倍超の小選挙区は現在は47もある。是正論議は高まりそうだが、来年夏の参院選を控えて与野党の対立が強まっており、解決策は簡単には見つかりそうにない。】

(29日毎日新聞)

1票の格差が大きいほど平等権が侵害される,だから一票の格差を是正しなければならない,というのは分かりやすい理屈ですが,厳格に一票の格差を実現しようとすると,過疎化の進行する地方では議席が自ずから減少することになり,地方の利益が国政に反映しない虞があるとの指摘を受けることになります。

一見正当に聞こえる指摘ではありますが,もともと日本の国会議員は全国民の代表であって,州の代表であるアメリカの上院議員とは立場が違います。全国民の代表である以上は,都会選出の議員であっても,例えば地方を中心とした農業や整備新幹線のあり方について,地方住民の立場を考慮した議論を展開すべきは当然のことです。多様な価値観や利害にいかに配慮し,調整できるかが国会議員には求められている訳であり,政党単位で多数決が行われる現代にあっては,政党内でいかに多様な価値観への配慮ができるかが重要となります。

したがって,政党においては,マニフェストどおりの多数決をすればよい訳ではなく(もしそうなら,各法案の採決は,選挙結果に基づき自動的に行えばいいことになりますね),少数意見にいかに配慮し調整できるか,そのための仕組み作りが問われるというべきです。党内民主主義の実効化がまさに重要というべきでしょう。この点への確信があれば,1票の格差の厳格な是正も,より一層進められやすくなると思います。


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