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弁護士田島正広の“立憲派”ブログ

田島正広弁護士が、注目裁判例や立法動向、事件などを取り上げ、法の支配に基づく公正な自由競争社会の実現を目指す実務法曹としての視点から解説します。

日弁連会長選挙結果と会内融和の必要性

日弁連会長選挙は、既に報じられている通り、昨日再投票が行われましたが、山岸候補が最多得票を得たものの再び当選者なしの結果となり、立候補からやり直すことになりました。

日弁連会長選挙速報(日弁連HP)

選挙会規において、当選のためには、最多得票者が同時に各単位会の3分の1(18単位会)以上で多数でなければならないと定められていることから、このような事態が生じる訳です。この会規のやっかいなところは、一回目の投票で当選が決まらずに上位得票者2名による再投票となっても、同様の縛りがかかることから、何度やっても当選者が決まらない可能性を孕んでいるところにあります。

平等権の観点からは部分社会の内部自治とはいえ一人一票による単純多数決が本則であるべきですし、弁護士自治を定める弁護士法も、単位会の自治から直ちに日弁連会長の選任に単位会の賛同を求めている訳ではありませんが、日弁連として単位会に軸足を置くスタンスを維持するために、上記のような制約が付加されている訳です。もちろん、中央が地方の意見を無視して暴走するような事態が許されるべきではありませんが、反面いつまでも会長が決まらず、会の運営が停滞する事態などあってはならないことです。ましてや今回は現職会長が異例の二期目の立候補をしているため、選挙期間中は否が応でも会務は疎かにならざるを得ないことでしょう。その期間がこれからどれだけ続くことか(選挙は続くーよ~♪どーこまーでーも~♪、と歌っていた方がいましたが、真にシニカルな歌で苦笑いせざるを得ませんでした)。

この点、今回の選挙では、前回のような法曹人口論に関する深刻な意見対立があった訳ではなく、また大阪のように都市部といえども票差が接近しているところもあって、必ずしも中央対地方の対立図式がある訳でもありません。いや、各地方の中心ともいうべき高裁所在地の単位会のうち、札幌、仙台、愛知県、広島、福岡県の各弁護士会では宇都宮候補が勝利している一方、山岸候補も旭川、函館、山口県、香川県、徳島、高知、長崎県、宮崎県などの地方会で勝利しているのであって、そこには都市部と地方の対立などと呼ぶべきものはないのです。

2回続けて現職会長が単純多数決で敗北しながら、それでもそれを不信任として受け入れようとしないということ自体が異常なことのように思いますが、ありもしない中央対地方の対立図式を強調し、地方の守り手であるかに強弁して対立を煽ることで、不信任ではないかに開き直るとなれば、それはもはや多様な価値観のバランスの上に拠って立つべき日弁連現職会長の行うべきこととは思えません。宇都宮会長には、不信任の選挙結果を厳粛に受け止め、会内融和に努めて頂くことを希望します。


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俳句会に参加して

このブログもだいぶ間が空いてしまい、大変失礼しました。

さて、とりあえずは近況報告ということで、先日初めて参加した俳句会の報告です。参加した会は、西行の山家集から命名した山家会という俳句会です。私が以前仕事上お付き合いが深かった皆さんの主催される会で、今回は久しぶりの再会を兼ねての参加でした。

当日その場で与えられたお題は「米」。時間オーバーしながらも何とか一句詠みましたが、自分自身どうもしっくりきません。そんな訳で、その後も推敲してみて、次の一句となりました。

稲穂垂れ雀らも舞ふ黄金(きん)舞台

→豊作に農家の皆さんばかりか雀達までも喜んでいるかに飛び回っています。それはあたかも黄金色の舞台を舞っているかのようです。

いかがですか?俳句は初挑戦なので、細かいところはご容赦を!


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「弁護士海援隊」の被災地無料法律相談に参加して

ツイッターでは度々つぶやきましたが、先週末岩手県の三陸地方震災被災地での無料法律相談会に参加してきました。題して、「弁護士海援隊」。主唱者の野村吉太郎先生の熱い呼びかけに私も趣旨賛同しての参加です。

現地では、津波被害を受けた地域に入った瞬間、それまでの何事もなかったかのような景色が一変しました。テレビの映像で見る悲劇の世界が自分の目の前の現実であることを暫くは受け入れられず茫然自失となり、その一方でテレビでは伝わらないヘドロのような若干癖のある臭いを感じて、大変な災害の現場にいることに改めて気づかされました。

相談会での状況は守秘義務がありますので一切ここには書きませんが、多くの皆さんが何らかの相談ニーズをかかえながら、それを誰に相談していいのかもわからない現実があることを再認識させられました。今後自分に何ができるのかは分かりませんが、自分に可能なこと、自分にしかできないことがきっとあるはずなので、引き続きこの問題には積極的に向き合っていきたいと思います。

ところで、この相談会の最中、東京は桜が満開となり、いや既にその盛りを過ぎてしまった感もあります。花好きの私は出遅れたなとの思いですが、今年は震災のせいもあってか、あまり桜を楽しもうという気持ちになれなかったのも事実です。被災地にももう暫くしたらきれいな花が咲くのでしょう。多くの皆さんが花に救われることを期待しています。

そんな気持ちを込めて、二首詠みました。

黙祷を捧げをらむか薄紅の花をつぼみの内に潜めて

晴れぬのは己が心と気づきたり春陽(はるひ)差し込む花の盛りに


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ある動物愛護団体の活動に観る「倫理」と「法令遵守」

先日,テレビである動物愛護団体の活動が紹介されていました。その際,その中心的な活動家の方のコメントが印象的だったので紹介します。
「自分達は,自身の倫理観にのみ従い,動物虐待を許すような悪法には従わない。」と。

「悪法」が「法の支配」の下で許容されるのかは,「法の支配」の理念型が正義の法に基づくものと説明されるだけに議論の余地があるのでしょうが,ここではそこは置いて,「自身の倫理観にのみ従う」というくだりに着目したいと思います。

鯨やイルカ,馬を食べる行為は残虐な行為であるという倫理観は,それらを食することのない文化の下でよく育まれるものでしょう。そうした倫理観を持つ方も,家畜としての牛や豚,さらには野山の鴨やウサギを食することまで禁止すべきと言うかと言えば,そうではないようです(もちろん,その取り扱い上の残虐行為の問題はあります)。結局それは自身の文化のみをよりどころとする倫理の押しつけでしかないのではないか。こう考えたときに,そこに一神教の影響を感じるのは私だけでしょうか。すなわち,多神教と違い,一神教は他の神々を受け入れる余地がありません。相互尊重の余地はあるでしょうが,原理主義的になればなるほど,それは相手の価値観を無視することになるのです。

もとより,動物愛護には諸々の要素があります。前述の文化論の他に,絶対数量の減少を理由とする種の保存の必要性や食の連鎖のバランスの維持,ひいてはその捕獲から市場流通に至る社会経済活動の健全な保護育成などです。倫理観への批判をもって,これらの諸要素を無視しようとする趣旨では決してないのですが,倫理観を言うのであれば,同じ人間として相手の倫理観にも響く論でなければならないし,法を悪法と断ずるからには,相手国の文化・道徳への配慮もなければならないと思います。ましてや,当該国家における法を無視するからには,当該国における民主制の機能状況や国民意識,法改正の可能性にも配慮すべきでしょう。これらを無視して倫理を振り回すことになれば,それはもはや正統政府とその法体系そのものとの暴力的な対決,すなわちテロリズムでしかないと私は思います。

余談ですが,前記の活動家の言葉と真に近い言葉を,ある名誉毀損事件の被告である某出版社が主張していました。北朝鮮のような非民主的国家ならばまだしも,この日本にあって何をか言わんやとの思いでした。報道は第四の権力とも評されるほどの影響力を持つからこそ,その権力におごることなく適正な報道に努めなければならないのに,書きたいように書くのが当然,その何が悪いと言わんばかりの態度には,真に腹立たしいものを感じる次第です。

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市ヶ谷濠にて詠める歌一首

椋鳥の脇目も振らずついばめば揺れる小枝の花ぞこぼれる @市ヶ谷濠

昨日の歌にコメントも頂けたことですし(服部さん,ありがとうございます!),その気になってもう一首詠んでみました。

下の句の「揺れる」は「揺らす」にしようか迷いました。「揺れる」の方が一歩退いて見ている感じで,響きも美しいように思いこれにしてみましたが,どうでしょう?コメントを頂いた服部さん,ご意見は?

PS.この短歌は,ブログテーマの立憲主義とどう関係するんですかね~とのご質問があるとしたら,「国のありようは歴史,伝統,文化なくして語ることはできず,国を大切に思い,国民の生命・身体・財産を守り,ひいて国民の文化を守るためには,政治権力に枠をはめてコントロールする必要がある。その際,文化への理解は立憲主義確立への重要な動機となる」,とでも言ったらよいでしょうか(笑)。実際,この国の全てに興味がなくなって海外移住されるような方にとっては,この国の政治がどうなろうと構わないかも知れませんから。
まあ,難しいことばかり言わずに柔らかく言い換えれば,立憲主義を説くには伝統文化にも興味をもった方がいいということですかね~(笑)。詠んだ歌が上手いか下手かは別にして(苦笑)。

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